? 勿論《もちろん》さ、義理にも善くは云えないッさ……ははははは。それは情談だが、きついお見限りですね。何処《どこ》か穴でも出来たンじゃないかね? 出来たとえ? そらそら、それだもの、だから鰻男《うなぎおとこ》だということさ。ええ鰌《どじょう》で無くッてお仕合せ? 鰌とはえ? ……あ、ほンに鰌と云えば、向う横町に出来た鰻屋ね、ちょいと異《おつ》ですッさ。久し振りだッて、奢《おご》らなくッてもいいよ。はははは」
 皺延《しわの》ばしの太平楽、聞くに堪えぬというは平日の事、今宵《こよい》はちと情実《わけ》が有るから、お勢は顔を皺《しか》めるはさて置き、昇の顔を横眼でみながら、追蒐《おっか》け引蒐《ひっか》けて高笑い。てれ隠《かく》しか、嬉《うれ》しさの溢《こぼ》れか当人に聞いてみねば、とんと分からず。
「今夜は大分御機嫌だが」と昇も心附いたか、お勢を調戯《なぶり》だす。「この間はどうしたもンだッた? 何を云ッても、『まだ明日《あした》の支度をしませんから』はッ、はッ、はッ、憶出すと可笑《おか》しくなる」
「だッて、気分が悪かッたンですものを」と淫哇《いやら》しい、形容も出来ない身振り。

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