のずか》ら真相を看破《あきら》めるというには至らずして、動《やや》もすれば浅膚《せんぷ》の見《けん》に陥いる。それゆえ、その物に感染《かぶ》れて、眼色《めいろ》を変えて、狂い騒ぐ時を見れば、如何《いか》にも熱心そうに見えるものの、固《もと》より一時の浮想ゆえ、まだ真味を味《あじわ》わぬうちに、早くも熱が冷めて、厭気になッて惜し気もなく打棄ててしまう。感染《かぶ》れる事の早い代りに、飽きる事も早く、得る事に熱心な代りに、既に得た物を失うことには無頓着《むとんじゃく》。書物を買うにしても、そうで、買いたいとなると、矢も楯《たて》もなく買いたがるが、買ッてしまえば、余り読みもしない。英語の稽古《けいこ》を初めた時も、またその通りで、初めるまでは一|日《じつ》をも争ッたが、初めてみれば、さほどに勉強もしない。万事そうした気風で有てみれば、お勢の文三に感染《かぶ》れたも、また厭《あ》いたも、その間にからまる事情を棄てて、単にその心状をのみ繹《たず》ねてみたら、恐らくはその様な事で有ろう。
 かつお勢は開豁《はで》な気質、文三は朴茂《じみ》な気質。開豁が朴茂に感染れたから、何処《どこ》か仮衣《かり
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