《こわ》い事をお云いなさるねえ」とお政はおそろしい顔になッた。「お前さんがお勢を踏付たと誰が云いました? 私ア自分にも覚えが有るから、只の世間咄に踏付られたと思うと厭なもンだと云ッたばかしだよ。それをそんな云いもしない事をいって……ああ、なんだね、お前さん云い掛りをいうンだね? 女だと思ッて、そんな事を云ッて、人を困らせる気だね?」
と層《かさ》に懸ッて極付《きめつけ》る。
「ああわるう御座ンした……」と文三は狼狽《あわ》てて謝罪《あやま》ッたが、口惜《くちお》し涙が承知をせず、両眼に一杯|溜《たま》るので、顔を揚げていられない。差俯向《さしうつむ》いて「私が……わるう御座ンした……」
「そうお云いなさると、さも私が難題でもいいだしたように聞こゆるけれども、なにもそう遁《に》げなくッてもいいじゃないか? そんな事を云い出すからにゃア、お前さんだッて、何か訳が無《なく》ッちゃア、お云いなさりもすまい?」
「私がわるう御座ンした……」と差俯向いたままで重ねて謝罪《あやまっ》た。「全くそんな気で申した訳じゃア有りませんが……お、お、思違いをして……つい……失礼を申しました……」
こう云わ
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