ぬか」と思えば胸も落着かず、臆病《おくびょう》で好事《ものずき》な眼を額越《ひたえごし》にそッと親子へ注いでみればお勢は澄ました顔、お政は意味の無い顔、……咄したとも付かず、咄さぬとも付かぬ。
 寿命を縮めながら、食事をしていた。
「そらそら、気をお付けなね。小供じゃア有るまいし」
 ふと轟《とどろ》いたお政の声に、怖気《おじけ》の附いた文三ゆえ、吃驚《びっくり》して首を矯《あ》げてみて、安心した※[#白ゴマ点、181−17]お勢が誤まッて茶を膝《ひざ》に滴《こぼ》したので有ッた。
 気を附けられたからと云うえこじな顔をして、お勢は澄ましている。拭《ふ》きもしない。「早くお拭きなね」と母親は叱《しか》ッた。「膝の上へ茶を滴《こぼ》して、ぽかんと見てえる奴が有るもんか。三歳児《みつご》じゃア有るまいし、意久地の無いにも方図《ほうず》が有ッたもンだ」
 もはやこう成ッては穏《おだやか》に収まりそうもない。黙ッても視《み》ていられなくなッたから、お鍋は一とかたけ煩張《ほおば》ッた飯を鵜呑《うのみ》にして、「はッ、はッ」と笑ッた。同じ心に文三も「ヘ、ヘ」と笑ッた。
 するとお勢は佶《きっ》と振
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