。己れの打解けた心で推測《おしはか》るゆえ、さほどに難事とも思えない。もウ些《すこ》しの辛抱、と、哀《かなし》む可《べ》し、文三は眠らでとも知らず夢を見ていた。
 機会《おり》を窺《み》ている二日目の朝、見知り越しの金貸が来てお政を連出して行く。時機到来……今日こそは、と領《えり》を延ばしているとも知らずして帰ッて来たか、下女部屋の入口で「慈母《おッか》さんは?」と優しい声。
 その声を聞くと均《ひと》しく、文三|起上《たちあが》りは起上ッたが、据《す》えた胸も率《いざ》となれば躍る。前へ一歩《ひとあし》、後《うしろ》へ一歩《ひとあし》、躊躇《ためらい》ながら二階を降りて、ふいと縁を廻わッて見れば、部屋にとばかり思ッていたお勢が入口に柱に靠着《もた》れて、空を向上《みあ》げて物思い顔……はッと思ッて、文三立ち止まッた。お勢も何心なく振り反ッてみて、急に顔を曇らせる……ツと部屋へ入ッて跡ぴッしゃり。障子は柱と額合《はちあ》わせをして、二三寸跳ね返ッた。
 跳ね返ッた障子を文三は恨めしそうに凝視《みつ》めていたが、やがて思い切りわるく二歩三歩《ふたあしみあし》。わななく手頭《てさき》を引手
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