。いろいろに紛れようとしてみても、どうも紛れられない、意地悪くもその余所事が気に懸ッて、気に懸ッて、どうもならない。怺《こら》えに、怺えに、怺えて見たが、とうどう怺え切れなくなッて、「して見ると、同じように苦しんでいるかしらん」、はッと云ッても追付かず、こう思うと、急におそろしく気の毒になッて来て、文三は狼狽《あわ》てて後悔をしてしまッた。
 叱《しか》るよりは謝罪《あやま》る方が文三には似合うと誰やらが云ッたが、そうかも知れない。

     第十四回

「気の毒気の毒」と思い寐《ね》にうとうととして眼を覚まして見れば、烏《からす》の啼声《なきごえ》、雨戸を繰る音、裏の井戸で釣瓶《つるべ》を軋《きし》らせる響《ひびき》。少し眠足《ねた》りないが、無理に起きて下坐舗へ降りてみれば、只お鍋が睡むそうな顔をして釜《かま》の下を焚付《たきつ》けているばかり。誰も起きていない。
 朝寐が持前のお勢、まだ臥《ね》ているは当然の事、とは思いながらも、何となく物足らぬ心地がする。
 早く顔が視《み》たい、如何様《どん》な顔をしているか。顔を視れば、どうせ好い心地がしないは知れていれど、それでいて只早
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