で、何となく気に懸るから、火を持ッて上ッて来たお鍋にこッそり聞いてみると、お嬢さまは気分が悪いと仰《おっ》しゃッて、御膳《ごぜん》も碌《ろく》に召上らずに、モウお休みなさいました、という。
「御膳も碌に?……」
「御膳も碌に召しやがらずに」
 確められて文三急に萎《しお》れかけた……が、ふと気をかえて、「ヘ、ヘ、ヘ、御膳も召上らずに……今に鍋焼饂飩《なべやきうどん》でも喰《くい》たくなるだろう」
 おかしな事をいうとは思ッたが、使に出ていて今朝の騒動を知らないから、お鍋はそのまま降りてしまう。
 と、独りになる。「ヘ、ヘ、ヘ」とまた思出して冷笑《あざわら》ッた……が、ふと心附いてみれば、今はそんな、つまらぬ、くだらぬ、薬袋《やくたい》も無い事に拘《かかわ》ッている時ではない。「叔父の手前何と云ッて出たものだろう?」と改めて首を捻《ひね》ッて見たが、もウ何となく馬鹿気ていて、真面目《まじめ》になって考えられない。「何と云ッて出たものだろう?」と強《し》いて考えてみても、心|奴《め》がいう事を聴かず、それとは全く関繋《かんけい》もない余所事《よそごと》を何時《いつ》からともなく思ッてしまう
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