作ッたものゆえ、人物も事実も皆つまらぬもののみでしょうが、それは作者も承知の事です。
 只々《ただ》作者にハつまらぬ事にハつまらぬという面白味が有るように思われたからそれで筆を執ッてみた計りです。
[#ここで字下げ終わり]


     第十三回

 心理の上から観《み》れば、智愚の別なく人|咸《ことごと》く面白味は有る。内海文三の心状を観れば、それは解ろう。
 前回参看※[#白ゴマ点、169−10]文三は既にお勢に窘《たしな》められて、憤然として部屋へ駈戻《かけもど》ッた。さてそれからは独り演劇《しばい》、泡《あわ》を噛《かん》だり、拳《こぶし》を握ッたり。どう考えて見ても心外でたまらぬ。「本田さんが気に入りました」それは一時の激語、も承知しているでもなく、又いないでも無い。から、強《あなが》ちそればかりを怒ッた訳でもないが、只《ただ》腹が立つ、まだ何か他《た》の事で、おそろしくお勢に欺《あざむ》かれたような心地がして、訳もなく腹が立つ。
 腹の立つまま、遂《つい》に下宿と決心して宿所を出た。ではお勢の事は既にすッぱり思切ッているか、というに、そうではない、思切ッてはいない。思切ッて
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