」
「誰がとぼけています、誰が誰に別れようと云うのです」
文三はムラムラとした。些し声高《こわだか》に成ッて、
「とぼけるのも好加減になさい、誰が誰に別れるのだとは何の事です。今までさんざ人の感情を弄《もてあそ》んで置きながら、今と成て……本田なぞに見返えるさえ有るに、人が穏かに出れば附上《つけあが》ッて、誰が誰に別れるのだとは何の事です」
「何ですと、人の感情を弄んで置きながら……誰が人の感情を弄びました……誰が人の感情を弄びましたよ」
ト云った時はお勢もうるみ眼に成っていた。文三はグッとお勢の顔を疾視付《にらみつ》けている而已《のみ》で、一語をも発しなかった。
「余《あんまり》だから宜《い》い……人の感情を弄んだの本田に見返ったのといろんな事を云って讒謗《ざんぼう》して……自分の己惚《うぬぼれ》でどんな夢を見ていたって、人の知た事《こッ》ちゃ有りゃしない……」
トまだ言終らぬ内に文三はスックと起上《たちあが》って、お勢を疾視付《にらみつ》けて、
「モウ言う事も無い聞く事も無い。モウこれが口のきき納めだからそう思ってお出《い》でなさい」
「そう思いますとも」
「沢山……浮気をな
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