だ」
「アハハハ、とうとう Self−evident truth にまで達したか」
「どうしたの」
「マア聞いて御覧なさい、余程面白い議論が有るから」
ト云ッてまた文三の方を向いて、
「それじゃその方の口はまず片が附たと。それからしてもう一口の方は何だッけ……そうそう丹治丹治、アハハハ何故丹治と云ッたのが侮辱になるネ、それもやはり Self−evident truth かネ」
「どうしたの」
「ナニネ、先刻《さっき》我輩が明治年代の丹治と云ッたのが御気色《みけしき》に障ッたと云ッて、この通り顔色まで変えて御立腹だ。貴嬢《あなた》の情夫《いろ》にしちゃア些《ち》と野暮天すぎるネ」
「本田」
昇は飲かけた「コップ」を下に置いて、
「何でゲス」
「人を侮辱して置きながら、咎《とが》められたと云ッて遁辞を設けて逃るような破廉耻《はれんち》的の人間と舌戦は無益と認める。からしてモウ僕は何にも言うまいが、シカシ最初の『プロポーザル』(申出)より一歩も引く事は出来んから、モウ降りてくれ給え」
「まだそんな事を云ッてるのか、ヤどうも君も驚く可《べ》き負惜しみだな」
「何だと」
「負惜しみじゃない
前へ
次へ
全294ページ中192ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング