妬《しっと》の原素も雑《まざ》ッている。それから」
「モウこれより外に言う事も無い。また君も何にも言う必要[#「必要」に白丸傍点]も有るまいから、このまま下へ降りて貰いたい」
「イヤ言う必要が有る。冤罪《えんざい》を被《こうぶ》ッてはこれを弁解する必要が有る。だからこのまま下へ降りる事は出来ない。何故痩我慢なら大抵にしろと『忠告』したのが侮辱になる。成程親友でないものにそう直言したならば侮辱したと云われても仕様が無いが、シカシ君と我輩とは親友の関繋《かんけい》じゃ無いか」
「親友の間にも礼義は有る。然《しか》るに君は面と向ッて僕に『痩我慢なら大抵にしろ』と云ッた。無礼じゃないか」
「何が無礼だ。『痩我慢なら大抵にしろ』と云ッたッけか、『大抵にした方がよかろうぜ』と云ッたッけか、何方《どっち》だッたかモウ忘れてしまッたが、シカシ|何方《どっち》にしろ忠告だ。凡《およ》そ忠告と云う者は――君にかぶれて哲学者振るのじゃアないが――忠告と云う者は、人の所行を非と認めるから云うもので、是《ぜ》と認めて忠告を試みる者は無い。故《ゆえ》に若《も》し非を非と直言したのが侮辱になれば、総《すべて》の忠告
前へ 次へ
全294ページ中189ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング