云う高笑いの声がする。耳を聳《そばだ》てて能《よ》く聞けば、昇の声もその中《うち》に聞える……まだ居ると見える。文三は覚えず立止ッた。「若《も》しまた無礼を加えたら、モウその時は破れかぶれ」ト思えば荐《しき》りに胸が浪《なみ》だつ。暫《しば》らく鵠立《たたずん》でいて、度胸を据《す》えて、戦争が初まる前の軍人の如くに思切ッた顔色《がんしょく》をして、文三は縁側へ廻《めぐ》り出た。
 奥坐舗を窺いて見ると、杯盤狼藉《はいばんろうぜき》と取散らしてある中に、昇が背なかに円《まろ》く切抜いた白紙《しらかみ》を張られてウロウロとして立ている、その傍《そば》にお勢とお鍋が腹を抱えて絶倒している、が、お政の姿はカイモク見えない。顔を見合わしても「帰ッたか」ト云う者もなく、「叔母さんは」ト尋ねても返答をする者もないので、文三が憤々《ぷりぷり》しながらそのままにして行過ぎてしまうと、忽《たちま》ち後《うしろ》の方で、
(昇)「オヤこんな悪戯《いたずら》をしたネ」
(勢)「アラ私じゃ有りませんよ、アラ鍋ですよ、オホホホホ」
(鍋)「アラお嬢さまですよ、オホホホホ」
(昇)「誰も彼も無い、二人共|敵手《あ
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