ねつ》けてやッたら、痩我慢と云わんばかりに云やアがッた」
「それで君、黙ッていたか」
ト山口は憤然として眼睛《ひとみ》を据えて、文三の貌を凝視《みつ》めた。
「余程《よっぽど》やッつけて遣ろうかと思ッたけれども、シカシあんな奴の云う事を取上げるも大人気《おとなげ》ないト思ッて、赦《ゆる》して置てやッた」
「そ、そ、それだから不可《いかん》、そう君は内気だから不可」
ト苦々しそうに冷笑《あざわら》ッたかと思うと、忽ちまた憤然として文三の貌を疾視《にら》んで、
「僕なら直ぐその場でブン打《なぐ》ッてしまう」
「打《な》ぐろうと思えば訳は無いけれども、シカシそんな疎暴《そぼう》な事も出来ない」
「疎暴だッて関《かま》わんサ、あんな奴《やつ》は時々|打《な》ぐッてやらんと癖になっていかん。君だから何だけれども、僕なら直ぐブン打ッてしまう」
文三は黙してしまッてもはや弁駁《べんばく》をしなかッたが、暫らくして、
「トキニ君は、何だと云ッて此方《こっち》の方へ来たのだ」
山口は俄かに何か思い出したような面相《かおつき》をして、
「アそうだッけ……一番町に親類が有るから、この勢でこれから其処
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