「仕様が無いけれども面白く無いじゃないか」
「トキニ、本田の云事だから宛にはならんが、復職する者が二三人出来るだろうと云う事だが、君はそんな評判を聞いたか」
「イヤ聞かない。ヘー復職する者が二三人」
「二三人」
 山口は俄に口を鉗《つぐ》んで何か黙考していたが、やがてスコシ絶望気味《やけぎみ》で、
「復職する者が有ッても僕じゃ無い、僕はいかん、課長に憎まれているからもう駄目だ」
 ト云ッてまた暫らく黙考して、
「本田は一等上ッたと云うじゃないか」
「そうだそうだ」
「どうしても事務外の事務の巧《たくみ》なものは違ッたものだネ、僕のような愚直なものにはとてもアノ真似は出来ない」
「誰にも出来ない」
「奴の事だからさぞ得意でいるだろうネ」
「得意も宜いけれども、人に対《むか》ッて失敬な事を云うから腹が立つ」
 ト云ッてしまッてからアア悪い事を云ッたと気が附いたが、モウ取返しは附かない。
「エ失敬な事を、どんな事をどんな事を」
「エ、ナニ些し……」
「どんな事を」
「ナニネ、本田が今日僕に或人の所へ往ッてお髯《ひげ》の塵《ちり》を払わないかと云ッたから、失敬な事を云うと思ッてピッタリ跳付《は
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