と云ッて、それを鼻に掛けているに相違ない。それも己《うぬ》一個《ひとり》で鼻に掛けて、己《うぬ》一個《ひとり》でひけらかして、己《うぬ》と己《うぬ》が愚《ぐ》を披露《ひろう》している分の事なら空家で棒を振ッたばかり、当り触りが無ければ文三も黙ッてもいよう、立腹もすまいが、その三文信用を挟《さしはさ》んで人に臨んで、人を軽蔑して、人を嘲弄《ちょうろう》して、人を侮辱するに至ッては文三腹に据《す》えかねる。
面と向ッて図《ず》大柄《おおへい》に、「痩我慢なら大抵にしろ」と昇は云ッた。
痩我慢々々々、誰が痩我慢していると云ッた、また何を痩我慢していると云ッた。
俗務をおッつくねて、課長の顔色を承《う》けて、強《しい》て笑ッたり諛言《ゆげん》を呈したり、四《よつ》ン這《ばい》に這廻わッたり、乞食《こつじき》にも劣る真似をして漸《ようや》くの事で三十五円の慈恵金《じえきん》に有附いた……それが何処《どこ》が栄誉になる。頼まれても文三にはそんな卑屈な真似は出来ぬ。それを昇は、お政如き愚痴無知の婦人に持長《もちちょう》じられると云ッて、我程《おれほど》働き者はないと自惚《うぬぼれ》てしまい、し
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