め》と退《しりぞ》くは残念、何か云ッて遣りたい、何かコウ品の好《い》い悪口雑言、一|言《ごん》の下《もと》に昇を気死《きし》させる程の事を云ッて、アノ鼻頭《はなづら》をヒッ擦《こす》ッて、アノ者面《しゃッつら》を※[#「赤+報のつくり」、117−7]《あか》らめて……」トあせるばかりで凄《すご》み文句は以上見附からず、そしてお勢を視れば、尚《な》お文三の顔を凝視めている……文三は周章狼狽《どぎまぎ》とした……
「モウそ……それッきりかネ」
 ト覚えず取外して云って、我ながら我音声の変ッているのに吃驚《びっくり》した。
「何が」
 またやられた。蒼《あお》ざめた顔をサッと※[#「赤+報のつくり」、117−12]らめて文三が、
「用事は……」
「ナニ用事……ウー用事か、用事と云うから判《わか》らない……さよう、これッきりだ」
 モウ席にも堪えかねる。黙礼するや否《いな》や文三が蹶然《けつぜん》起上《たちあが》ッて坐舗を出て二三歩すると、後《うしろ》の方でドッと口を揃《そろ》えて高笑いをする声がした。文三また慄然《ぶるぶる》と震えてまた蒼ざめて、口惜《くちお》しそうに奥の間の方を睨詰《にらみ
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