もそれと悟ッたか、
「厭《いや》かネ、ナニ厭なものを無理に頼んで周旋しようと云うんじゃ無いから、そりゃどうとも君の随意サ、ダガシカシ……痩《やせ》我慢なら大抵にして置く方が宜かろうぜ」
 文三は血相を変えた……
「そんな事|仰《おっ》しゃるが無駄《むだ》だよ」
 トお政が横合から嘴《くちばし》を容《い》れた。
「内の文さんはグッと気位が立上ってお出でだから、そんな卑劣《しれつ》な事ア出来ないッサ」
「ハハアそうかネ、それは至極お立派な事《こっ》た。ヤこれは飛《とん》だ失敬を申し上げました、アハハハ」
 ト聞くと等しく文三は真青《まっさお》に成ッて、慄然《ぶるぶる》と震え出して、拳《こぶし》を握ッて歯を喰切《くいしば》ッて、昇の半面をグッと疾視付《にらみつ》けて、今にもむしゃぶり付きそうな顔色をした……が、ハッと心を取直して、
「エヘヘヘヘ」
 何となく席がしらけた。誰も口をきかない。勇がふかし甘薯《いも》を頬張《ほおば》ッて、右の頬を脹《ふく》らませながら、モッケな顔をして文三を凝視《みつ》めた。お勢もまた不思議そうに文三を凝視めた。
「お勢が顔を視ている……このままで阿容々々《おめお
前へ 次へ
全294ページ中160ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング