ワしていた。実は昨日《きのう》朝飯《あさはん》の時、文三が叔母に対《むかっ》て、一昨日《おととい》教師を番町に訪うて身の振方を依頼して来た趣を縷々《るる》咄《はな》し出したが、叔母は木然《ぼくぜん》として情|寡《すくな》き者の如く、「ヘー」ト余所事《よそごと》に聞流していてさらに取合わなかッた、それが未《いま》だに気になって気になってならないので。
 一時頃に勇《いさみ》が帰宅したとて遊びに参ッた。浮世の塩を踏まぬ身の気散じさ、腕押、坐相撲《すわりずもう》の噺《はなし》、体操、音楽の噂《うわさ》、取締との議論、賄方《まかないかた》征討の義挙から、試験の模様、落第の分疏《いいわけ》に至るまで、凡《およ》そ偶然に懐《むね》に浮んだ事は、月足らずの水子《みずこ》思想、まだ完成《まとまっ》ていなかろうがどうだろうがそんな事に頓着《とんじゃく》はない、訥弁《とつべん》ながらやたら無性に陳《なら》べ立てて返答などは更に聞ていぬ。文三も最初こそ相手にも成ていたれ、遂《つい》にはホッと精を尽かしてしまい、勇には随意に空気を鼓動さして置いて、自分は自分で余所事《よそごと》を、と云たところがお勢の上や身の
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