uエ」
「エじゃないよ、またお前二階へ上ッてたネ」
 また始まッたと云ッたような面相《かおつき》をして、お勢は返答をもせずそのまま子舎《へや》へ這入《はい》ッてしまッた。
 さて子舎へ這入ッてからお勢は手疾《てばや》く寐衣《ねまき》に着替えて床へ這入り、暫らくの間|臥《ね》ながら今日の新聞を覧《み》ていたが……フト新聞を取落した。寐入ッたのかと思えばそうでもなく、眼はパッチリ視開《みひら》いている、その癖静まり返ッていて身動きをもしない。やがて、
「何故《なぜ》アア不活溌《ふかっぱつ》だろう」
 ト口へ出して考えて、フト両足《りょうそく》を蹈延《ふみの》ばして莞然《にっこり》笑い、狼狽《あわ》てて起揚《おきあが》ッて枕頭《まくらもと》の洋燈《ランプ》を吹消してしまい、枕に就いて二三度|臥反《ねかえ》りを打ッたかと思うと間も無くスヤスヤと寐入ッた。

     第九回 すわらぬ肚《はら》

 今日は十一月四日、打続いての快晴で空は余残《なごり》なく晴渡ッてはいるが、憂愁《うれい》ある身の心は曇る。文三は朝から一室《ひとま》に垂籠《たれこ》めて、独り屈托《くったく》の頭《こうべ》を疾《や》
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