ワんぼう》の秋色|蕭条《しょうじょう》として却々《なかなか》春のきおいに似るべくも無いが、シカシさびた眺望《ながめ》で、また一種の趣味が有る。団子坂へ行く者|皈《かえ》る者が茲処《ここ》で落合うので、処々に人影《ひとかげ》が見える、若い女の笑い動揺《どよ》めく声も聞える。
 お勢が散歩したいと云い出したので、三人の者は教育博物館の前で車を降りて、ブラブラ行きながら、石橋を渡りて動物園の前へ出《い》で、車夫には「先へ往ッて観音堂の下辺《したあたり》に待ッていろ」ト命じて其処から車に離れ、真直《まっすぐ》に行ッて、矗立千尺《ちくりゅうせんせき》、空《くう》を摩《な》でそうな杉の樹立の間を通抜けて、東照宮の側面《よこて》へ出た。
 折しも其処の裏門より Let《レット》 us《アス》 go《ゴー》 on《オン》(行こう)ト「日本の」と冠詞の付く英語を叫びながらピョッコリ飛出した者が有る。と見れば軍艦|羅紗《ラシャ》の洋服を着て、金鍍金《きんめっき》の徽章《きしょう》を附けた大黒帽子を仰向けざまに被《かぶ》った、年の頃十四歳ばかりの、栗虫のように肥《ふと》った少年で、同遊《つれ》と見える同じ服
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