謔闥c子と思詰めた顔色《がんしょく》、去りとはまた苦々しい。ト何処かの隠居が、菊細工を観ながら愚痴を滴《こぼ》したと思食《おぼしめ》せ。(看官)何だ、つまらない。
 閑話|不題《ふうだい》。
 轟然《ごうぜん》と飛ぶが如くに駆来《かけきた》ッた二台の腕車《くるま》がピッタリと停止《とま》る。車を下りる男女三人の者はお馴染《なじみ》の昇とお勢|母子《おやこ》の者で。
 昇の服装《みなり》は前文にある通り。
 お政は鼠微塵《ねずみみじん》の糸織の一ツ小袖に黒の唐繻子《とうじゅす》の丸帯、襦袢《じゅばん》の半襟《はんえり》も黒|縮緬《ちりめん》に金糸でパラリと縫の入《い》ッた奴か何かで、まず気の利いた服飾《こしらえ》。
 お勢は黄八丈の一ツ小袖に藍鼠金入繻珍《あいねずみきんいりしゅちん》の丸帯、勿論《もちろん》下にはお定《さだま》りの緋縮緬《ひぢりめん》の等身《ついたけ》襦袢、此奴《こいつ》も金糸で縫の入《い》ッた水浅黄《みずあさぎ》縮緬の半襟をかけた奴で、帯上はアレハ時色《ときいろ》縮緬、統括《ひっくる》めて云えばまず上品なこしらえ。
 シカシ人足《ひとあし》の留まるは衣裳附《いしょうづけ
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