ウくらみ》に往った時のお勢の姿を憶出し、どういう心計《つもり》か蹶然《むっく》と起上り、キョロキョロと四辺《あたり》を環視《みまわ》して火入《ひいれ》に眼を注《つ》けたが、おもい直おして旧《もと》の座になおり、また苦々しそうに、
「馬鹿奴」
これは自《みずか》ら叱責《しか》ったので。
午後はチト風が出たがますます上天気、殊《こと》には日曜と云うので団子坂近傍は花観る人が道去り敢《あ》えぬばかり。イヤ出たぞ出たぞ、束髪も出た島田も出た、銀杏返《いちょうがえ》しも出た丸髷《まるまげ》も出た、蝶々《ちょうちょう》髷も出たおケシも出た。○○《なになに》会幹事、実は古猫の怪という、鍋島《なべしま》騒動を生《しょう》で見るような「マダム」某《なにがし》も出た。芥子《けし》の実ほどの眇少《かわいら》しい智慧《ちえ》を両足に打込んで、飛だり跳《はね》たりを夢にまで見る「ミス」某も出た。お乳母も出たお爨婢《さんどん》も出た。ぞろりとした半元服、一夫数妻《いっぷすさい》論の未だ行われる証拠に上りそうな婦人も出た。イヤ出たぞ出たぞ、坊主も出た散髪《ざんぎり》も出た、五分刈も出たチョン髷も出た。天帝の愛子
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