オて言いかけて倏忽《たちまち》ハッと心附き、周章《あわて》て口を鉗《つぐ》んで、吃驚《びっくり》して、狼狽《ろうばい》して、遂《つい》に憤然《やっき》となッて、「畜生」と言いざま拳《こぶし》を振挙げて我と我を威《おど》して見たが、悪戯《いたずら》な虫|奴《め》は心の底でまだ……やはり……
 シカシ生憎《あいにく》故障も無かッたと見えて昇は一時頃に参ッた。今日は故意《わざ》と日本服で、茶の糸織の一ツ小袖《こそで》に黒七子《くろななこ》の羽織、帯も何か乙なもので、相変らず立《りゅう》とした服飾《こしらえ》。梯子段《はしごだん》を踏轟《ふみとどろ》かして上ッて来て、挨拶《あいさつ》をもせずに突如《いきなり》まず大胡坐《おおあぐら》。我鼻を視るのかと怪しまれる程の下眼を遣ッて文三の顔を視ながら、
「どうした、土左《どざ》的宜しくという顔色《がんしょく》だぜ」
「些《すこ》し頭痛がするから」
「そうか、尼御台《あまみだい》に油を取られたのでもなかッたか、アハハハハ」
 チョイと云う事からしてまず気《き》に障わる。文三も怫然《むっ》とはしたが、其処《そこ》は内気だけに何とも言わなかった。
「どうだ
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