b今までが三十円だッたから五円殖えて……」
「何ですネー母親《おっか》さん、他人の収入を……」
「マアサ五円殖えて三十五円、結構ですワ、結構でなくッてサ。貴君《あなた》どうして今時高利貸したッて月三十五円取ろうと言うなア容易な事《こっ》ちゃア有りませんヨ……三十五円……どうしても働らき者《もん》は違ッたもんだネー。だからこの娘《こ》とも常不断《じょうふだん》そう言ッてます事サ、アノー本田さんは何だと、内の文三や何《なん》かとは違ッてまだ若くッてお出《い》でなさるけれども、利口で気働らきが有ッて、如才が無くッて……」
「談話《はなし》も艶消《つやけ》しにして貰《もらい》たいネ」
「艶じゃア無い、真個《ほんと》にサ。如才が無くッてお世辞がよくッて男振も好けれども、唯|物喰《ものぐ》いの悪《わり》いのが可惜《あったら》瑜《たま》に疵《きず》だッて、オホホホホ」
「アハハハハ、貧乏人の質《しち》で上げ下げが怖ろしい」
「それはそうと、孰《いず》れ御結構振舞いが有りましょうネ。新富《しんとみ》かネ、但《ただ》しは市村《いちむら》かネ」
「何処《いずれ》へなりとも、但し負《おん》ぶで」
「オヤそれ
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