ニやこういうのは慾サ、慾が深過ぎるのサ」
「ナニ些《ち》とばかりなら人様《しとさま》に悪く言われても宜《いい》からもう些《すこ》し優しくしてくれると宜《いいん》だけれども、邪慳《じゃけん》で親を親臭いとも思ッていないから悪《にく》くッて成りゃアしません」
 ト眼を細くして娘の方を顧視《みかえ》る。こういう眺《にら》め方も有るものと見える。
「喜び叙《ついで》にもう一ツ喜んで下さい。我輩今日一等進みました」
「エ」
 トお政は此方《こなた》を振向き、吃驚《びっくり》した様子で暫《しば》らく昇の顔を目守《みつ》めて、
「御結構が有ッたの……ヘエエー……それはマア何してもお芽出度《めでとう》御座いました」
 ト鄭重《ていちょう》に一礼して、さて改めて頭《こうべ》を振揚げ、
「ヘー御結構が有ッたの……」
 お勢もまた昇が「御結構が有ッた」と聞くと等しく吃驚した顔色《かおつき》をして些《すこ》し顔を※[#「赤+報のつくり」、74−9]《あか》らめた。咄々《とつとつ》怪事もあるもので。
「一等お上《あがん》なすッたと言うと、月給は」
「僅《たった》五円違いサ」
「オヤ五円違いだッて結構ですワ。こう
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