tけで是非色狂いとか何とか碌《ろく》な真似はしたがらぬものだけれども、お勢さんはさすがは叔母さんの仕込みだけ有ッて、縹致は好くッても品行は方正で、曾て浮気らしい真似をした事はなく、唯一心に勉強してお出でなさるから漢学は勿論出来るシ、英学も……今何を稽古《けいこ》してお出でなさる」
「『ナショナル』の『フォース』に列国史《スイントン》に……」
「フウ、『ナショナル』の『フォース』、『ナショナル』の『フォース』と言えば、なかなか難《むつか》しい書物だ、男子でも読《よめ》ない者は幾程《いくら》も有る。それを芳紀《とし》も若くッてかつ婦人の身でいながら稽古してお出でなさる、感心な者だ。だからこの近辺じゃアこう言やア失敬のようだけれども、鳶《とび》が鷹《たか》とはあの事だと言ッて評判していますゼ。ソレ御覧、色狂いして親の顔に泥《どろ》を塗《ぬ》ッても仕様がないところを、お勢さんが出来が宜いばっかりに叔母さんまで人に羨《うらや》まれる。ネ、何も足腰|按《さす》るばかりが孝行じゃアない、親を人に善く言わせるのも孝行サ。だから全体なら叔母さんは喜んでいなくッちゃアならぬところを、それをまだ不足に思ッて
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