ゐるといふことをわからしてやらうと思つたのだ。しかし妻の話が出る度に、Oは笑つて何も云はない。それが私には、Oの方も大分変だし又怪しいと思はれた。

 二十七日の対話以来、妻はOの話が出る度に打ち沈むやうに見える。Oに就いて色んな話をするにも拘らず、少しも感情を面に表はさない。
 あの会話をするまでは妻がOの居合せないところでOの話をする時はいつも顔を輝やかして大層嬉しさうだつた。しかしあれ以来妻はそんな顔をするのをやめた。
 私は妻との親密な交渉をやめることに決心した。


     ○
   七月一日
 Oは十二時前に帰宅したが、それから暫く昼間行つて来たカワラの話をしてゐたので、一時頃まで床に就けなかつた、と妻は云ふ。
 妻は尚報告した。Oは今朝妻を暫く二階の自分のところに引き留めて、ズボンの繕ひを頼んだ。それでOの単純さを別に悪気もなくからかつた。更に妻はOのことを沢山話したが、別段非難はしなかつた。Oは妻に洗濯や裁縫を頼んだ。
 母も私にそのことを非難を以て話した。母は、Oは永いこと『子持を引附けて置いた』、結局私だけが一番面倒な目に会ふ、と云ふ。
 オサダ(長田?)は私に近
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