はひつきりなしに咳をしてゐる。咽喉の病気だ。
この二つの事実の比較して私は……尤も私は間違つてゐるかも知れない。咳は咳でも妻の仕方とOの仕方は違ふから。
手紙
○
妻は横山には別の態度を取つてゐる。
私が妻を何かで叱つたら、Oはそれを庇つた。
○
六月二十七日
明日はどんな事があつても下宿へ行くと妻に申し渡した。
妻は私のこの言葉を平気な顔をして聴いた。私が幾らかためらつてゐると、妻は、どうせさうしなければならないんだから決めたことはさつさと実行する方がいいと云つた。
二階へ行つて話すと、Oはさうかと云つたきりであつた。
妻も上つて来た。Oは私よりも妻と余計話した。妻が赤ん坊の泣声を聞きつけて下りて行くと、我々二人は執拗に沈黙した。両方に具合の悪いこの沈黙を破つたのは私の方だつたらしい。
私は寝ようと思つて階下へ降りた。六畳の小さなランプがまだ消してないのに気がついたから妻にまた起きるのかと訊いた。妻は、Oには別にして上げることもないから起きません、どうぞランプを消して下さいと云つた。妻からそんな返答をされると、私は意地悪に似
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