て森厳化された会堂の内部に出る。祭壇と壇下のピアノと壇上の大きなバイブルが、ひきしめている。学生は静かに椅子を占有する。黒いガウンを着た教師達が集まってくる。西洋人の教師も六、七人集まるのである。一しきりしいんと静まりかえるころきまって地下室から、花色の軽装をした金色の髪の毛の縮れた美しい西洋の女があがって来てピアノに坐るのだった。白皙《はくせき》な額と澄み切った眼とが深い学者的な感銘を与えずにおかないO氏が、白色の指揮棒を取って「讃美歌――番」と囁く。そしてピアノの伴奏と白い指揮棒の波動に導かれて教師も学生も各々がつくる大交響楽に聞きとれ、唱って止まなかった。これが宗教的熱誠だとは平一郎に思われなかった。しかし芸術的な陶酔には似通っている。彼は会堂に溢れる甘美な愉悦を見つめながら、彼自身それに酔う気はしなかった。
(女性的で、楽天的で、悦びが自分には浅すぎ、軽すぎる!)そう考える平一郎の精神を、ときわもかきわも、御栄えあれ! 御栄えあれ! と合唱は廻るのだった。(とに角いいことには違いない。教師も学生も異邦人も男女も一緒に悦び和らぎつつ唱うことは! ただそのいっしょさ[#「いっしょさ
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