っ[#「はっ」に傍点]とした。すると天野がじろり[#「じろり」に傍点]恐ろしいほどに睨みつけていた。「偉大な男と女」そう言ってよい天野と綾子が自分を力一杯に見つめていることは恐ろしかった。しかし、明日から新しい自由な学校へ行って勉強できることを思えば「少年の平一郎」は生き生きした歓喜と希望が湧いて来た。その浄い生き生きした感情は彼の奥深くに鬱屈しそうになる「わけの分らぬ暗鬱と恐ろしさ」に克つ力があった。彼は悦びに溢れて元気になった。
「ほんとに大河さんは羨ましいこと、わたしも男だったらお願いして学校へ上げて戴くんですけれど、ねえ、奥さま」粂は言って、「さっきもわたし大河さんは幸福《しあわせ》だわって言っていたのですのよ」
「お前だって女学校へ行ったらどうだい。靴を穿《は》いてさ」
「まあ、奥さま、わたし男だったら学校へ行きたいのですわ。女学生なんかもう死んでも大嫌い!」粂のいかにも嫌いらしい口ぶりにみんなは笑った。平一郎も笑った。そして笑いながら、綾子の電光のように強い速やかな視線を平一郎に投げるのは感じられた。天野のゆったりと充実した力を湛えた静かさは笑いながらも放れなかった。彼は女
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