愛し尊敬こそすれ、未だ彼女をけがそうなどと思ったことはない。己は常にあの和歌子の美しさにふさわしいように自分自身を偉大な人間としなくてはならないと励んでいる。己は深井をも愛している。自分は深井を愛さずにはいれないから愛した。この必然がどう悪いのか。深井も己を愛しているではないか。和歌子も己を愛しているではないか。そうして三人がこれまで実に楽しく生き甲斐を感じつつ勉強して来たではないか。何処に悪いことがあるのだ」
 市街を離れたS河の上流であった。地が高くなるにつれて狭《せば》まった両岸の平野はそこではもうほとんどなかった。静かな澄んだ藍色の大空の下に、河流は深い淵をつくって緩かに流れていた。水面に絶壁から這いさがる藤蔓が垂れて流水はそこに渦を巻いていた。枯草の生い茂った河原洲、土堤《どて》の彼方に国境の遠山が水晶のように光って見える。平一郎は河原の草の中に寝転がった。
「それがよくないというなら何故己に静かによくない訳を教えないのか。何故直ちに己と彼女との間をおかしな関係に考えてしまうのか。汝が卑劣だからではないか! 恥じるがいい!」
 このときほど自分がお光一人の手に養われ、貧しい中
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