ろう。大川村の人達はすべて北野と同一血統で、したがって村の富栄は北野家の富栄であるように北野家の富栄は大川村の富栄である。大川村の住民は当然のこととして北野家の永遠を希い、そのためにはいかな犠牲も拒んではならないという一種の道徳が権威を帯びて村人に浸潤して行った。そうしてその結果は村一切の滋養は北野一家に吸収され、村全体は貧窮に苦しむようになり、しかもそれが感謝すべき自然な状態であるとさえ思い込むようになってしまった。お光がまた幼かった頃、終日を野に出て労働して日が海に没してしまう頃村の入口へ帰って来た百姓達の群が、自分達の泥まみれの仕事着も饑《ひも》じい空腹も忘れ果てたように、白壁の煉塀を廻らした宏壮な北野家の邸を仰いでいるのをよく見た。彼女が城門のような門際に佇んでいるのを、一人一人が心からお愛想を言って行った。村人達にはたとえどれ程彼ら自身の生活が貧弱化されても、北野家の富と栄えとは十分な報償であるらしかった。恐ろしいことにはお光達自身――北野家の子孫がこうした村の状態の源は遠い祖先の政略であったことを忘れて、それが正しいことのように思い込んでしまったことであった。お光でさえが後
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