ゐると問うた。姉は淀みなく三人が一所に面白さうに遊んでゐますとの答に、妻は安心して休み居つた。それから少し過ぎてお兒が一人上つてきて、母ちやん乳いと云ふのに、又奈々子はと姉等に問へば、そこらに遊んでゐるでせう、秋ちやんが遊びにつれていつたんでせうなどいふを咎めて、それではならない、慥かに見とゞけなくてはなりませんと、妻は今は起き出でゝ、そこかこゝかとたづねさした。隣へ見にやる、菓子屋へ見にやる、下水溝の橋の下まで見たが、まさかに池とは思はないので、最後に池を見たらば………。
 浮いて居つた池に、仰向になつて浮いてゐた。垣根の竹につかまつて、池へ這入らずに上げることが出來た。時間を考へると、初め居るかと問うた時慥かに居たものならば、其後の間は誠に僅かの間に相違ないが、まさか池にと思つて早く池を見なかつた。騷ぎだした時、直ぐに池を見たら間に合つたかも知れなかつた。さういふ生れ合せだと皆は云ふけれど、さう許りは思はれない。あぶないと云つて居ながら、なぜ早く池を埋めて終はなかつたか。考へると何もかも屆かない事許りで。それが殘念でならない。
 妻の繰言は果てしがない。自分もなぜ早く池を埋めなかつ
前へ 次へ
全20ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 左千夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング