ら中央のふところから自由自在になわのごとくあやなした。
「うまいぞうまいぞ」と喝采《かっさい》するものがある。最後にかれはへびを一まとめにして口の中へ入れた。人々は驚いてさかんに喝采した。
「おいどうだ」
かれはへびを口からはきだしてからみんなにいった。
「うまいうまい」
「みんな見たか」
「うまいぞ」
「見たものは弁当をだせ」
人々はだまって顔を見合った、そうして後列の方からそろそろと逃げかけた。
「おい、こらッ」
いまにぎり飯を食いながら逃げようとする一人の少年の口元めがけてへびを投げた。少年はにぎり飯を落とした。
「つぎはだれだ」
かれは器械体操のたなの下にうずくまってる少年の弁当をのぞいた、弁当の中には玉子焼きとさけとあった。
「うまそうだな」
かれは手を伸《の》ばしてそれを食った。そして半分をしゃもじにやった。
「つぎは?」
もうだれもいなかった、投げられたへびはぐんにゃりと弱っていた。かれはそれを拾うと裏の林の方へ急いだ。そこには多くの生徒が群れていた、かれらの大部分は水田に糸をたれてかえるをつっていた。その他の者は木陰《こかげ》木陰《こかげ》に腰をおろして雑誌
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