った、そうしてポケットから青大将《あおだいしょう》をだした。
「そもそもこれは漢《かん》の沛公《はいこう》が函谷関《かんこくかん》を越ゆるときに二つに斬《き》った白蛇の子孫でござい」
調子面白くはやしたてたので人々は少しずつ遠くから見ていた。少年等はまた始まったといわぬばかりに眉をしかめていた。
「おいしゃもじ!」とかれは背後を向いて飯を食ってる一人の少年をよんだ、しゃもじはおわりの一口をぐっとのみこんで走ってきた、かれはやせて敏捷《びんしょう》そうな少年だが、頭は扇《おうぎ》のように開いてほおが細いので友達はしゃもじというあだ名をつけた。かれは身体《からだ》も気も弱いので、いつでも強そうな人の子分になって手先に使われている。
「おい口上をいえ」と巌がいった。
「なんの?」
「へびに芸をさせるんだ」
「よしきた……そもそもこれは漢の沛公《はいこう》が二つに斬《き》った白蛇の子孫でござい」
調子おもしろくはやしたてたので人々は少しずつ集まりかけた。
「さあさあ、ごろうじろ、ごろうじろ」
しゃもじの調子にのって巌はへびをひたいに巻きつけほおをはわし首に巻き、右のそで口から左のそで口か
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