を読んだり、宿題を解いたりしていた。巌はずらりとかれらを見まわした、これというやつがあったら喧嘩《けんか》をしてやろう。
だがあいにく弱そうなやつばかりで相手とするにたらぬ、そこでかれは木の下に立って一同を見おろしていた、かれの胸はいつも元気がみちみちている、かれは毎朝眼がさめるとうれしさを感ずる、学校へいって多くの学生をなぐったりけとばしたり、自由に使役したりするのがさらにうれしい。かれはいろいろな冒険談を読んだり、英雄の歴史を読んだりした、そうしてロビンソンやクライブやナポレオンや秀吉《ひでよし》は自分ににていると思った。
「クライブは不良少年で親ももてあました、それでインドへ追いやられて会社の腰弁《こしべん》になってるうちに自分の手腕をふるってついにインドを英国のものにしてしまった、おれもどこかへ追いだされたら、一つの国を占領して日本の領土を拡張しよう」
こういう考えは毎日のようにおこった、かれは実際|喧嘩《けんか》に強いところをもって見ると、クライブになりうる資格があると自信している。
「おれは英雄だ」
かれはナポレオンになろうと思ったときには胸のところに座蒲団《ざぶとん
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