売りにでてください、二人《ふたり》でやればだいじょうぶです」
「そうだ」とお美代はうれしそうにいった。「そうだよ千三、私は女だからなにもできないと思っていたが、今夜から男になればいいのだ、伯父さんと同じ人になればいいのだ、そうしようね」
「お母さんに荷をかつがせて豆腐を売らせたくはないんだけれども……お母さん、ぼくはまだ小さいからしかたがありません、大きくなったらきっとこのうめあわせをします」
チビ公の興奮《こうふん》した目はるりのごとくすみわたって瞳《ひとみ》は敢為《かんい》の勇気に燃えた。
うとうとと眠ったかと思うともう東が白みかけたので母に起こされた、チビ公はいきおいよく起きて仕事にとりかかった、お美代もともに火をたきつけた、このいきおいにおされてお仙《せん》はぶつぶついいながらもやはり働きだした。
「伯母さんはなにもしなくてもいいからただ指図《さしず》だけしてください」
とチビ公はいった。
至誠はかならず天に通ずる、チビ公の真剣な労働は邪慳《じゃけん》のお仙の角《つの》をおってしまった、三人は心を一つにして、覚平《かくへい》が作る豆腐におとらないものを作りあげた。
「さ
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