伯父さんは酔《よ》ってるんです、伯父さんをゆるしてください、明日《あす》の朝になって酒がさめたら伯父さんと一緒《いっしょ》に警察へあやまりにまいります、伯父さんがいなければ私一人では豆腐を作ることができません」
チビ公の声は涙にふるえていた。
「なにをぬかすかばか」と伯父さんがどなった。
「商売ができなかったらやめてしまえ、商売をしたからって助役の息子に食われてしまうばかりだ」
伯父さんはのそのそと歩きだした、かれは門の外になくなく立っている妹(チビ公の母)を見やって少し躊躇《ちゅうちょ》したが、
「あとはたのむぜ、おれは強盗《ごうとう》の親玉を退治《たいじ》たんだから、これから警察へごほうびをもらいにゆくんだ」
母がなにかいおうとしたが伯父はずんずんいってしまった、ひとりの巡査と、ふたりの町の人がつきそうていった。チビ公と母はどこまでもそのあとについた、伯父さんは警察の門をはいるときちらとふたりの方をふり向いた。
「困《こま》ったねえ」と母がいった。
「阪井にけがをさしたんでしょうか」
「そうらしいよ、たいしたこともないようだが、それでも相手が助役さんだからね」
「今晩帰ってく
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