日においてなお英雄を崇拝するものあらばそれは個人の生存権利を知らない旧《ふる》い頭の持ち主であります」
一気にすらすらといいだした流暢な弁舌はさわやかに美しい、彼の目はいかにも聡明に輝き、その頬《ほお》は得意の心状と共にあからんだ。
「よくしゃべる奴だ」と彰義隊《しょうぎたい》が叫んだ。
「しッしッ」と制する声。
手塚は会衆を満足そうに見おろしてつづけた。
「一|将《しょう》功《こう》成りて万骨《ばんこつ》枯《か》るという古言があります、ひとりの殿様がお城をきずくに、万人の百姓を苦しめました、しかも殿様は英雄とうたわれ百姓は草莽《そうもう》の間につかれて死にます、清盛《きよもり》、頼朝《よりとも》、太閤《たいこう》、家康《いえやす》、諸君はかれらを英雄なりというでしょう、しかしかれらがどれだけ諸君の祖先を幸福にしましたか、個人がその知力と腕力をもって他の多くの個人を征服し、侵掠《しんりゃく》し、しかもその子孫にまでおよぼすということは今日の世にゆるすべからざることであります、すでに世界においては欧州戦争以来すべてがデモクラシーになりました、民衆がすなわち国家であります、民衆の意志が
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