ださい」と司会者の銅貨が注意した。
「よしッ、わかりました、そこで満場の諸君!」
 彰義隊《しょうぎたい》はこう向きなおってなにかつづけようとしたがなにをいうつもりであったか忘れたのでしきりに頭をかいた。
「おわりッ」
 かれは壇を降りた、拍手と笑声とが一度にとどろいた。
「ただいまのは少し脱線しました、次は……」と銅貨がいった。このとき手塚がみなに押されて座席をはなれた。会衆は波の如く動いた。手塚は器用で頓知がある、人まねがじょうずで、活動の弁士の仮声《こわいろ》はもっとも得意とするところであり、かつ毎月多くの雑誌を読んであらゆる流行語を知っている。かれは新しい制服を着てなめらかに光る靴をはいていた。
 拍手に送られてかれは演壇に立った。
「私は英雄を非認《ひにん》するためにこの演壇に上がりました、私は歴史のあらゆる頁《ページ》から英雄を抹殺したいと思います。英雄なる文字は畢竟《ひっきょう》奴隷《どれい》なる文字の対象であります、私共の祖先は英雄の奴隷《どれい》であったのです、個人の権利を侵掠《しんりゃく》して自己の征服欲を満足させたものは英雄であります、もし今日……デモクラシーの今
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