としょうぎたい》であった。かれは剣道の稽古着に白いはかまをはき、紐《ひも》の横にきたない手ぬぐいをぶらさげたまま、のそのそとテーブルの上の水さしからコップで水を飲んだ。
「水を飲みにあがっちゃいかん」とだれかがいった。実際彰義隊は弁舌がへたなので何人《なんぴと》もかれが演説をすると思わなかったのである。
「満場の諸君!」
彰義隊はきっと直立して両手をはかまの紐《ひも》の間にはさみ、おそろしく大きな声でどなった。会衆はわっとわらいだしたがすぐしずかになった。
「満場の諸君!」とかれはふたたびいった。そうしてまた「満場の諸君!」とどなった。会衆はわくがごとくわらった。
「わが輩《はい》は英雄を崇拝する、わが輩は英雄たらんとしつつある。わが輩は諸君が英雄たることを望む、小説や音楽や芝居やさらにもっとも下劣なる活動写真を見るようなやつは到底《とうてい》英雄にはなれない。わが輩はそいつらをばかやろうと呼ぶ、今夜ここに英雄もきているだろうが、ばかやろうもなかなか多い、わが輩は片っ端からぶんなぐって首を抜いてやるからそう思え」
「脱線脱線」と叫んだものがある。
「なにを? ……」
「暴言はやめてく
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