わらった。こういう滑稽な男が司会をしたということは会の威厳を損じたに違いないが、しかし二つの学校の生徒がしのぎをけずって戦おうという殺気立った会場を春のごとく平和にしたのはこの男のおかげである。
 弁論の題はこの席上で多数決で決めることになっている。
 各自の抱負《ほうふ》をのべること、
 科学について、
 英雄論、
 この三つが提出された。英雄論を提出したのは手塚であった。司会者は採決した。英雄論が大多数をもって通過した。それはいかにも青年にふさわしき題であった。学生の眼はことごとく異様に輝き、その呼吸が次第にせまってきた。しかしだれあってまっさきに立つ者がなかった。すべてこういう場合に先登をする者はきわめて損である。いかんとなれば後の弁士に攻撃されるからである。中学生はことごとく手塚と柳の方を見やった。手塚はしきりにノートをくっている。光一は微笑している、師範学校側では野淵《のぶち》という上級生と矢島というのが人々に肩をつかれていた。黙々塾《もくもくじゅく》ではみながチビ公をめざした。チビ公は頭を縮《ちぢ》めてひっこんだ。と、突然演壇に立った青年がある。それは例の浜本彰義隊《はまも
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