に癇癪《かんしゃく》を起こして国定忠治を縁側からほうりだすことがある。そこで手塚の機嫌が悪くなる、したがって奥様も、だんな様も一家が不機嫌になる。
それやこれやで家の中ばかりの芝居は面白くなくなった、そこで手塚は同志を糾合《きゅうごう》して少年劇をやろうと考えた。幸いなことにろばの父は製粉工場の番人である、この工場は二年前に破産していまではなかば貸し倉庫のようになっている、その一部分だけでも優《ゆう》に芝居に使用することができる。
手塚は毎日そこへ出張して芝居の稽古をした、かれは監督であり座長であった、ろばは敵役《かたきやく》や老役《ふけやく》を引きうけた、新ちゃんは母親やお婆さんになった、若くてきれいで人気のある役は手塚が取ったが、ここに一番困ったのは若い娘に扮《ふん》する女の子がないことである、手塚はそれを文子にあてた。
「いやよ、私いやよ」と文子は顔をまっかにして拒絶《きょぜつ》した。
「いやならいいよ、ぼくはあなたのお母さんにたのんでくる、これこれのわけで文子さんはぼくらの仲間になったのだからってね」
文子は当惑《とうわく》した、母に秘密をあばかれては大変である。
「じゃ
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