た、かれの学業はますます進み同時に野球の技術がすばらしいものになった。かれの身の丈《たけ》は五尺四寸、腕は鉄のごとく黒く、隆々《りゅうりゅう》とした肉が肩に隆起し、胸は春の野のごとく広く伸びやかである。かれの母はいつもかれを見やって微笑した。
「私より首一つだけ大きくなった、この子はしようがないね、去年の着物がみんな間にあわなくなった」
こうこぼしながらも心中の喜びは抑《おさ》えきれない。それと同時に文子も次第に美しくなった、が文子の顔に何やら一点の曇りがたなびきはじめた。
「おまえどうかしたのかえ」と母がきく。
「なんでもないわ」と文子はわらった。だが文子は決してなんでもなくはなかったのである。かの女は例の一件があってからその秘密を手塚ににぎられてしまった。もしかの女が家へ帰って母に打ちあけたなら、こんな苦しみはせずにすんだのである。
手塚は一旦《いったん》光一に忠告されて改心したもののそれはほんのつかの間であった、かれはどうしても娯楽なしには生きていられなかった、活動写真で低級な演劇趣味をふきこまれたかれは自分で芝居をして見たくなった。かれは活動を見ては家へ帰ってそのまねをした
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