いった。
「悪いことを教えると承知せんぞ」
 手塚の語気はますます鋭《するど》い。
「いやにいばるのね」と新ちゃんがいった。
「だまってろ」と手塚はどなりつけて文子の涙をハンケチで拭《ふ》いてやり、
「心配しなくてもいいよ、さあ僕と一緒《いっしょ》に行きましょう」
 手塚につれられて文子は外へ出た、文子は歩きながら一伍一什《いちぶしじゅう》を手塚に語った。
「わかってるよ」と手塚はいかにも侠客のような顔をしていった。
「あいつらはね、あなたをわなにかけて銭をゆすろうて計略なんだ、ぼくが引きうけていいようにするから安心していらっしゃい」
「でも私新ちゃんに四十銭と活動のお銭《あし》を返さなきゃならないわ」
「いいよ、それも僕が引きうけたから」
 手塚は文子の家近くまで送ってきた。かれはわかれぎわにこういった。
「兄さんに秘密だよ」
「ええ」
 読者諸君! 世に不良少年少女というものがある、かれらとても決して生来の悪人ではないのだ、だがそれらの多くは意志が薄弱で忍耐力がなく、健全な道徳観念がないところからわがままになり野卑になり学校が嫌いになり、そのかわりに娯楽を求める念が盛んになる、上品
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