から……でも文子さん、あなたも同じがま口の金を使ったんだからお友達におなりなさいね、そうしないとあの人等はお宅《たく》へいってお母《かあ》さんになにをいうか知れませんよ、ねえ、毎日でなくても、たまにちょいちょい私達と遊びましょう、ね、お母さんに知れたら困るでしょう」
文子は呼吸もできなかった、実際すでに不正な銭のご馳走《ちそう》になったのである、こんなことが母に知れたら母はどんなに怒るだろう、怒られても仕方がないが、母が歎《なげ》きのあまり病気になりはしないか、それからまた兄さんは……兄さんの名誉にかかわることがあると……。
哀《あわ》れ文子は四苦八苦の死地に陥《おちい》った、かの女は去るにも去られなくなった。と階段の音が聞こえてひとりの学生が現われた。
「やあ」
文子は顔をあげた、それは兄の友の手塚であった。かれはロシアの百姓が着るというルパシカに大きな縁のあるビロードの帽子をかぶっていた。
「どうしたの? 文子さん」とかれはいった。文子は手塚の腕にすがりついてなきだした。
「お前達はどうかしたんじゃないか」と手塚はなじるように一同に向かっていった。
「なにもしないよ」とろばが
前へ
次へ
全283ページ中244ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング