れは近藤勇か」と光一がきいた。
「ちがう、近藤勇はあんな懦弱《だじゃく》な顔をしておらんぞ」
「きみは近藤勇を知ってるのか」
「知らんよ、だがあんな下等ないものような面《つら》じゃない」
「元来ちょんまげの頭は下等なものだよ、ぼくはあれを見るとたまらなくいやになる」
「それでも近藤勇ならいいよ、国定忠治《くにさだちゅうじ》だの鼠小僧だの、博徒《ばくと》やどろぼうなどを見て喜んでるやつはくそだめへほうりこむがいい、おれは近藤勇だ」
だが彰義隊《しょうぎたい》君の期待するような近藤勇は現われなかった、のどに魚の骨を刺《さ》したような声で弁士は説明した、それによるといものような面《つら》は近藤勇なのである。
「だめだだめだ」と彰義隊はまたもや憤慨した。
「そら敵がきた、足をくばって、足、足! 足を……右足を軽くせんと横から斬りこまれたときに体が固くなるぞ、ああああだめだ、あの役者はすきだらけだ、あんな近藤勇があるもんか、ああばかッ、上段にふりかぶるやつがあるか、手元につけこんで胴を斬られるぞ、ばかッ切っ先がさがってる、切っ先が、そんな剣客が、ああああばかばかばか」
彰義隊があまりに憤慨す
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