るので周囲の人々はこそこそと逃げてしまった。実際彰義隊の目から見ると……光一の目から見てもこの役者の剣闘はめちゃめちゃなものであった、それでも見物人は喝采していた。
「おれは帰る」と彰義隊は立ちあがった、「ばかばかしくて見ておられん」
 彰義隊はかんかんにおこって帰った、光一はほっと溜《た》め息《いき》をついた。そうしてしずかに二階へあがった。暗がりの欄干《らんかん》のそばに手塚は頭から羽織をかぶって一生懸命にスクリーンを眺めながら声をかけている。
「いよう、大統領!」
 その隣にいた小さい女の子が皮もむかずにりんごをかじっている、その隣で手塚より首一つだけ背の高いろばとあだ名されてる青年が奇妙な声で叫んだ。
「いよう、せいちゃん!」
「清《せい》ちゃん、しっかり!」と手塚は叫んだ。近藤勇《こんどういさみ》に扮《ふん》した役者は清ちゃんという名前なのだ。手塚はこういう場所で、役者やなにかの事をくわしく知っているということを見物人にほこりたいのであった。
「手塚君」と光一は声をかけた。手塚はふりむいたがすぐ横を向いた。
「手塚君」と光一はそばへ歩みよったときろばのひざに足をあてた。
「痛
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