らそんなことはできないから、一高で一緒になろう、もう二、三年経てばぼくの家も楽になるから」
「検定《けんてい》を受けるつもりか」
「ああ、そうとも」
「じゃ一高で一緒になろう、きみがショートでぼくが投手で小原さんが捕手だったら愉快だな」
ふたりは顔を見るたびにそれを語りあった。ふたりははたして一高で一緒になり得《う》るだろうか、いまは読者にそれをもらすべきときでない。とにかく花はさき花は散り、月日は青春の希望と共に伸びやかに輝きながらうつりゆく。柳光一は四年生になった。
そのころ学校内で奇怪な風説が伝わった、生徒の中で女学生と交際し、ピアノやバイオリンの合奏をしたり、手紙を交換したり、飲食店に出入りしたりするものがある、いまのうちに探しだして制裁を加えなければ浦和中学の体面に関する。
憤慨の声々が起こった。
「だれだろう」
「だれだろう」
最初のうちはこの風評をとりあげるものはなかった。
「師範のやつらがいいふらしたんだ」
実際それは師範生徒からでたうわさである、師範生徒は中学生にくらべると学資も少ないし、また富める父兄をもたぬところからなにかにつけて不自由勝ちである、それに
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