れは光一に取ってもっとも苦しい敵であったが、しかし光一はそのためにおどろくべき進歩を示した、かれはどうかしてチビ公に打たれまい、チビ公を三振させようと研究した。昔|武田信玄《たけだしんげん》と上杉謙信《うえすぎけんしん》はたがいに覇業《はぎょう》を争うた、その結果として双方はたがいに研究しあい、武田流の軍学や上杉風の戦法などが日本に生まれた。もっともよき敵はもっともよき友である、他山の石は相《あい》砥礪《しれい》して珠になるのだ。千三があるために光一が進み、光一があるために千三が進む。
 戦場においては敵となりしのぎをけずって戦うものの光一と千三は家へ帰ると兄弟のごとく親しかった。
「今日《きょう》は一本も打たせなかったね」
「このつぎにはかならず打つぞ」
 二人はわらって話し合う。どんなに親しい間柄でも公《おおやけ》の戦場では一歩もゆずらないのがふたりの約束であった。時として光一は家へ帰ってもものもいわずにふさぎこんでることがある、だが千三がたずねてくるとすぐ愉快な気持ちになるのであった。
 あるとき光一はまじめな顔をしてこういった。
「青木君、ぼくの学校へ入学したまえよ」
「いまさ
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